前回のコラム、「【経営再起コラム・飲食店編-④】「第二の矢」を考え始める」の続きです。
今回は、「ガラッと変える発想の仕方」をお話ししたいと思います。
紙と鉛筆、あるいはPCを開けば、たった今から取り掛かれる方法です。
最初に、自社自店の特徴を書き出す。
お店の場所、お客様の属性、料金、営業時間、提供時間、何をしているか…
どんなことでもいいので、実際にお店のことを思い出して、思いつく限り書き出してみてください。
このときのポイントは、抽象的な表現はさけて、できるだけ具体的に書き出すことです。
例えば、こんな感じで書き出してみてください。
- お店の場所は? → JR〇〇線〇〇駅 △改札から歩いて3分
- 営業時間は? → 18時オープン・24時閉店(LO23時)
- お客様は? → 20代から60代の男女
- その中でも最も多い客層は? → 30代女子
- 料理は? → 500円~1,400円、イタリアン系のつまみが中心
- 平均的な客単価は? → 2,500円位
- その中でも最も多く出る料理は? → 〇〇味パスタ普通盛
- 何時位に何のきっかけで来店? → 8時以降。仕事帰りにちょっと一杯が80%以上のはず
- 滞在時間は? → 1時間くらい
- 新規と常連どっちが多い? → 90%以上が常連のはず
- まず最初に何を頼む? → 夏場はほぼ100%生ビール
- それはどれくらいで提供できる? → 込み具合とスタッフによるけど、3分~5分以内
- 最初に出すつまみは? → お通し
- お通し(チャージ)はいくらで、何分で出せる? → 500円で3分以内に出すのが目標
このような感じで、どんどん書いていきます。
書き出したことの逆を2つ書いていく。
現状の特徴を書き出した後、それぞれの内容に『両極端』に逆を書いてきます。
例えば、チャージが500円だとしたら「両極端」に「0円にする」「2,000円にする」というようにです。
このときのポイントは、
- やるやらない、自店には合わないなどは一切無視して、淡々と
- それじゃ商売にならないということも全く無視して
- 「〇〇にする」というように、実現することを前提に
- 表現方法や表現単位を変えてみる
- 全部きちんと書こうとしない
- 書けないものは飛ばす
ということです。
長年経営されていらっしゃる方はとくにですが、自分のやり方が決まっています。
もちろん、それが経営には大事なことですが、それがかえって「発想をガラッと変える」には邪魔になることがあります。
ですので、冗談半分でも受け狙いでもいいので、とにかく書き出してみてください。
上の例を参考にするとこんな感じです。
- お店の場所は? → JR〇〇線〇〇駅 △改札から歩いて3分
>改札から歩いて〇〇歩で到着。
>改札からLINEいただければ、到着したときに席に生ビール出しておきます。3分もかかるので。 - 営業時間は? → 18時オープン・24時閉店(LO23時)
>明るいうちから呑めます。(16時からお店を開ける)
>ラストオーダーから30分は呑めます。 - お客様は? → 20代から60代の男女
>20~60代は来ないで。じゃあ誰に来てもらう?10代と70代以上。そんなお店ある?
>20~60代だけしか来ないで。 - その中でも最も多い客層は? → 30代女子
>30代の女子は来ないで?
>女子は30代だけ限定。だったら男子も30代だけ? - 料理は? → 500円~1,400円、イタリアン系のつまみが中心で50品くらい
>全品100円しかやらない。その代わり、20品に絞るよ。
>1品1,000円しかやらない。その代わり、全部お客様の希望通り - 平均的な客単価は? → 2,500円位
>一人1,000円にする。1ドリンク+1品かな?
>お一人様5,000円以上。その代わり呑み放題で料理はお任せ。 - その中でも最も多く出る料理は? → 〇〇味パスタ普通盛
>当店、パスタやめました。普通盛は…
>今月からパスタしかやりません。 - 何時位に何のきっかけで来店? → 8時以降。仕事帰りにちょっと一杯が80%以上のはず
>仕事途中にノンアルで!
>当店は10時以降に来てください。 - 滞在時間は? → 1時間くらい
>1時間で3,000円です。
>30分で帰ってください。
>3時間以上いたら、半額にします。
>滞在を1分に。(出前?テイクアウト?)
>そもそも、来店でなくていい店にする。 - 新規と常連どっちが多い? → 90%以上が常連のはず
>すみません。当店はご新規さんお断りしてます。
>常連さんお断り。超常連さんだけのお店です。 - まず最初に何を頼む? → 夏場はほぼ100%生ビール
>夏はビールしかやりません。そのかわり、枝豆はいくら食べてもタダです。
>生ビールはないです。 - それはどれくらいで提供できる? → 込み具合とスタッフによるけど、3分~5分以内
>座って5秒で生ビール出します。
>じらしてじらして10分後に初めて呑めます。 - 最初に出すつまみは? → お通し
>お通しやめました。
>当店のつまみは、全てお通しです。 - お通し(チャージ)はいくらで、何分で出せる? → 500円で3分以内に出すのが目標
>10円で10秒で出します。
>3,000円で30分かけて3品出します。
これをやっていくと…
書き出していくうちに、こういうことが起きるはずです。
- 意外と膨らませられるものがある
- 冗談半分だったのに、実際にできそうなものがある
- どんな感じになるのか、イメージがわく
- 楽しんでいただいている様子がイメージわく
- お客様が何を望んで来店するのかが見えてきた
日々の経営の中で当たり前にやってきたことを、無理やり逆にあえて外れたところを考えてみると、全く違った発想が生まれてくることがあります。
(もちろん、新しいことが出てこないことも多いのですが…)
大きく業態ややり方を変える必要は、ないと思います。
ですが、コロナ禍でもお店に来ていただけるお客様は、何を望んでいるのかを改めて見つめ直すときではないでしょうか?
ですので、簡単にお金をかけないでできそうなことは、どうか始めてみてください。
例えば、「コロナが怖いから少しでも時間を短くするために、駅についたら電話ください。お席に着いたときには、5秒で生ビール出しますから。」などは、すぐにできるのではないでしょうか…